あなたのライブラリーの本棚を見せてください!
まちライブラリーのオーナーたちが情報を交換する「オーナーズフォーラム」の4回目を5月12日夜にオンラインで行いました。事前に提供していただいた写真を見ながら、全国各地でそれぞれのオーナーが運営する本棚の特徴や取り組みを知る貴重な場となりました。事例紹介では、神奈川県横須賀市と岩手県花巻市でまちライブラリーを運営する2人のオーナーが登場し、設立の経緯や運営の工夫などを紹介しました。また、運営にまつわるお金の悩みに対して、まちライブラリー提唱者の礒井純充さんがアドバイスするなど、盛りだくさんのフォーラムの様子をお伝えします。
テーマ、年代順、お気に入り…… 本棚のアイデア続々
一言で「本棚」と言っても、ジャンルや並べ方など内容は十人十色です。Co・lab香芝(奈良県香芝市)の北見さんは、大工仕事が趣味だったという祖父の手作りの本棚を紹介。文庫本がきっちり収まるサイズに作られており、北見さんは「祖父が好きだった司馬遼太郎などの歴史本が揃っていて、今は夫が愛読しています」とにっこり。家族で本を大切にしている様子が伝わりました。
また、1万7千冊の蔵書があるもりのみやキューズモール(大阪市中央区)では、季節などに絡めたテーマ展示を定期的に開いていることを取り上げて、スタッフの川上さんは「テーマを決めて目に付くところに並べることで、普段は借りられない本を借りてもらえる機会となります」と効果を話しました。文芸本については1950年代から発刊順に並べるというユニークな取り組みも披露しました。同様に、展示コーナーを設けているTENAMUビル(宮崎県小林市)の白谷さんは「漫画の貸し出しが多いので、他にも色んな本があることを伝えたくて展示に工夫をしています」とねらいを話しました。
利用者に無料で本棚を貸している取り組みを紹介したのは、ひびうた文庫(三重県津市)の村田さんです。借主の好きな本を置く仕組みで、本以外に雑貨などを置く人もいて、それをきっかけにイベントを開いたこともあるそうです。村田さんは「貸し本棚はお気に入りの本が置いてあるので、他の人も興味を持ちやすいようです。これによってライブラリーが活性化したと感じています」と話しました。
子どもの居場所づくり 見知らぬ土地でオープン
◇衣笠駅徒歩1分図書館(神奈川県横須賀市) 北川幸子さん
神奈川県横須賀市の「衣笠」というのんびりしたエリアで、2019年11月ごろからまちライブラリーを開いています。ライブラリーの愛称は「キヌイチ」です。私の住まいは衣笠から電車で30分くらいのところにある鎌倉で、衣笠は縁もゆかりも無い土地です。この場所を選んだのは、ライブラリーを開くにあたって相談に乗ってくれた大家さんの紹介がきっかけでした。窓が大きい畳の部屋なので、利用者からは居心地がいいと好評です。
本業ではクリエイティブの仕事をしているのですが、以前から虐待を受けた子どものケアに関心がありました。ライブラリーを開いたのは、子どもたちが生活の場から自分の気持ちを切り離せる、第三の居場所のようなところを作れたらいいなと思ったのが始まりです。コンセプトは「公園」みたいに開かれた場所で、誰もがフラットな関係でいられるよう気を付けています。今では近所の人がお花に水をあげてくれたり、お菓子を持ってきてくれたりと、色々な人たちに支えていただくようになりました。
集客は利用者のクチコミ 寄贈本5000冊超
仕事の都合があるので、オープン日は不定期です。開館する日の朝にSNSを通じてお知らせしています。チラシやポスターも無く、クチコミだけで広まった感じですね。利用者層は、午前中は未就学児連れのお母さん、午後は小学生くらい、夕方になると10代後半~20代が多いです。あと、高齢者はどの時間帯もいますね。特に0歳児を抱えるお母さんは、コロナの影響でなかなか外出できない状況なので、キヌイチでお母さん同士が友達になるなど、孤立の解消になっています。また、不登校で外出しなかったお子さんが「キヌイチなら行く」と言って電車とバスを乗り継いで来てくれることもあって、場所の力があるのかなと感じています。
キヌイチにある本や机はほとんど寄贈です。本は現在5000冊くらいになりました。ただ、本なら何でも受け入れるということではなく、「みなさんに読んでもらいたい本を持ってきてね」と伝えています。キヌイチでは思いの繋がりを大切にしたいと思っているので、古くても思い入れのある本をお持ちいただいています。また、キヌイチの場所を無料でお貸しして、元看護師の方による体や心の無料相談と、外国にルーツがある人たちが日本語を学ぶ夜間中学を開いています。子どもと若者をテーマにした色々な人たちの活動を応援することで、子どもと若者に新しい選択肢を提供できたらと思っています。
高齢化進む地方 人が集う場づくり模索
◇向小路まちライブラリー(岩手県花巻市) 四戸泉さん
元々は、建設コンサルタントとして全国各地で働いてきました。街おこしにも携わった経験もあるため、両親の実家がある花巻市に戻ったとき、地域の街おこしに取り組もうと合同会社「桜町家守舎」を立ち上げました。人口減や高齢化という課題を抱えている中で、人が集う場が必要だと思ったのですが、なかなかうまくいかずにいました。そのような時に、まちライブラリー提唱者の礒井純充さんの本を読んで、本を通して気軽に集まれる場所を作ろうと考えたのがきっかけです。
蔵書には、花巻ゆかりの作家である宮沢賢治の全集や花巻の歴史などを揃えています。そのほか、父も建設コンサルタントだったため工学系や水道業界の本など、今では販売していない本もあります。これからは、市内唯一の大学である富士大学の図書館や公共図書館とも連携して、地域の図書館のあるべき姿を考えていきたいと思っています。またコロナの影響でなかなか人が集まれない状況なので、ライブラリーの駐車場に移動式の本箱を設けました。椅子も置いて、一人数冊を持ち寄って、5~6人で本を通してのお話会を企画しているところです。
運営資金の悩み 各地のオーナーはどうしてる?
四戸さんから、まちライブラリーの運営費について相談があったのをきっかけに、オーナーの皆さんに状況を聞きました。四戸さんは「お金を儲けるためにまちライブラリーをしているわけではないけれど、今後自己資金だけではきつくなるかなと思っている」と悩みを打ち明けました。これに対して、自宅をまちライブラリーとして開放しているオーナーは「イベントを開きたいという人には部屋をお貸しするお代として少額の使用料をいただいて、電気代に充てています」と取り組みを紹介しました。
一方で、家賃もすべて自己負担で運営しているオーナーは「利用者から使用料などの申し出もあるのですが、お金は色々なものを引き連れてきてしまうのでお断りしています。みんなで作る場所にしたいので、自分でまかなえる範囲でやっています」と運営についての考えを説明しました。これに対して、まちライブラリー提唱者の礒井さんは「2~3割のオーナーの方が悩んでいる話」と前置きしつつ、自身のライブラリーでの取り組みを紹介しました。例えば、ライブラリー内のコーヒーメーカーの利用者から1杯100円を受け取り、絵本などの寄贈されにくい本の購入費に充てたり、ライブラリーの一部をシェアオフィスとして有料で貸し出したりなど、「身の丈に合った出費をしながら、身の丈に合った収入を得るのがいいかと思います。投資した分を回収することが目的化してしまうと本末転倒になってしまうので気を付けてください」とアドバイスしました。
アンケートへのご回答、ありがとうございました!(回答11件)
Q1 イベントの満足度を教えてください。
1.非常に不満 2.不満 3.普通 4.満足 5.非常に満足の5段階
Q2 イベントで参考になったことや、印象に残ったことを教えてください。
・衣笠徒歩1分図書館様の取り組みで、利用者さんの自由を最大限尊重されることが、指示される理由の一つなのかなと感じました。「受け入れてくれる居場所」としての機能を持つことが、まちライブラリーでも重要なのではないかと思いました。
・北川さんが話ししていた、自分でやりたい部分があるという話。スポンサーの申し出を断っているところなど。
・衣笠駅徒歩1分図書館さんの取り組みやポリシー。コミュニティー作りに大変参考になりました。
・公園を使ったライブラリーの取り組み
・まちライブラリーを始めたばかりなので、他のライブラリーのように認知されて人が繋がる場所になればと思います。
・資金のことや活動理念の事
・礒井さんの『月に2.3万やったら自分で払うから好きにやらせて』というような話。ぶっちゃけて話してるな、と思ってました。
・事例発表もとても刺激になりましたし、本棚紹介も楽しかったです。
・ライブラリー運営についての話も興味深く、本棚紹介は皆さんの工夫が本棚に現れていて、楽しかったです。
・どうしても運営資金のことが不安になってしまうのですが、なぜライブラリーをやるのかという本質に戻ることが大切だなぁと改めて感じるとともに、勇気をいただきました。また、広報活動も悩みの種でしたが、結局は口コミが一番という印象をいただき構えすぎなくていいんだなぁと思いました。まずは自分が楽しむことが大事だと感じました。
・オーナーのポリシーを貫く運営の仕方があるのだ と知ることができました
Q3 イベントをお知りになった媒体を教えてください(複数回答可)。
Q4 今後のオーナーズフォーラムで取り上げて欲しいテーマや開催する曜日・時間帯、ご自身が発表したいなど、イベントにまつわるご要望を何でもお知らせください。
・増え続ける本の管理をどうされているか、みなさんにおうかがいしたいです。棚に置けない本の管理、書籍の入れ替えの方法など聞きたいなと思います。
・なぜまちライブラリーを始めたかなどの志望動機など聞いてみたいです
・参加者の中で3、4人くらいのトークルーム(zoomの機能)にランダムで別れてディスカッションする時間があると面白いと思います
・コロナ禍の利用者への感染防止対策
・植本祭のことを聞きたいです
・集客の方法
・無人島に1冊持って行くなら 何にしますか。
・時間帯、ちょうど良いです。
・訪れたことのないまちライブラリーの方のお話をたくさん聞きたいです。
・仕事をしているので、今回のように夜の時間帯だとありがたいです。
・まちライブラリーなどのコミュニティスペースの後継を探す良い方法は?その考えが傲慢なのか