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第12回オーナーズフォーラム(2022年8月24日)報告

開催日
2022年8月24日
開催ライブラリー
オンライン

■第12回まちライブラリーオーナーズフォーラムレポート

まちライブラリーのオーナーたちがオンライン上で顔を合わせて、アイデアや悩みを共有するオーナーズフォーラムを2022年8月24日に開きました。

 

今回はまちライブラリー@ちとせがブックフェスタ期間中に開催する「本の巣箱グランプリ」(2022年9月3−4日)に合わせ、「巣箱スペシャル〜小さく始める・その始め方と続け方〜巣箱本棚オーナーのお話を聞いてみよう!」と題して、家の前や店の軒先など、屋外に置く巣箱型の本棚のオーナーが事例発表しました。

 

〈発表者〉

・まちライブラリー@Little Free Library花ラビット(沖縄・石垣島):宮良絵梨さん
「絵本図書室」の開設に向け、まずは巣箱型本棚をはじめた、石垣島唯一のまちライブラリー。

・まちライブラリー@古本たまや(大阪市・城東区):村上和也さん
古本屋の軒先に小さな巣箱を置く、城東区唯一のまちライブラリー。

 

■まちライブラリー@Little Free Library花ラビット

いつかは絵本図書室を〜無理なく小さく巣箱からはじめる

宮良さんは、石垣島で親子三人暮らし。親子で絵本が読める絵本図書室をいつか開きたいと思い、そのステップとして働いている花屋の店先に、小さな巣箱を置くことからスタートしました。花屋の店名が「花ラビット」なのでうさぎの出てくる絵本などを集めています。絵本は一度買ったら手元に置いておくことが多く、寄贈で集めるのが難しいこともあり、いまはご自身で購入した本を本棚に入れています。

 

絵本が寄贈でなかなか集まらない!他のライブラリーはどうしている?

絵本を扱っている他のライブラリーでの事例や経験を聞いてみると、東大阪市の「菱屋西染め色遊び」の伊藤さんからは、中学生になるくらいの親子はちょうど子どもの頃の物を処分する時期で、綺麗な状態で絵本を残している人も結構いるので聞いてみると良いとアドバイスがありました。

北海道・千歳市の根本さんは、去年5月に「えほんらいぶらりー千歳」をはじめました。もともと幼稚園教諭だったため自分の本があり、同じ千歳市でまちライブラリーをやっていた方から本を譲りうけたり、絵本の助成をやっているところに応募したり、人から寄付してもらったりして、徐々に数を増やしていったそうです。

 

様々な巣箱の置き方の工夫・デザインのアイデア

巣箱を軒先の路面に置いているため、日差しや天候の影響を受けやすく、何かいい方法はないか悩んでいるという宮良さんに対し、まちライブラリー@ちとせ「本の巣箱グランプリ」の主催者である森の仙人こと後藤さんから、デザインや作り方に様々な工夫がある巣箱をいくつか紹介がありました。

 

インパクトのある見た目だと、「なんだろう?」となり、そこでやっていることと知ってもらうと共感する人が出てくるので、たとえば、目線の高さに巣箱を置き、ペイントをしてカラフルにするなどの工夫を提案してくれました。

巣箱グランプリのエントリー作品

巣箱グランプリのエントリー作品

最後に、宮良さんは親子できてもらえるような場所になるよう、寄りたくなる工夫をして、蔵書を充実させていきたいと今後の意気込みを語ってくれました。千歳市の根本さんからは、宮良さんがお子さんにそこで楽しく絵本を読んであげていれば、人が自然に集まってくるので、小さなところから楽しんでやってみることを勧めてくれました。ライブラリーを始める際に、まちライブラリー提唱者の礒井純充さんからも「自分が楽しむこと、細く長く続けること」と言われたとのことで、無理なく自分が楽しむことを大切にしてやっていきたいと締めくくりました。

 

 

■まちライブラリー@古本たまや(大阪市・城東区)

村上さんは、大阪市城東区にある鴫野商店街で、古本たまやという古本屋の軒先においた巣箱を運営しています。定年後にいろんなことを生業にしてやってみたいと考え、生業の一つとして、3年ほど前に古本たまやを友人と始めました。友人が社会福祉法人をやっていることもあり、毎日の店番は社会福祉法人に入所されている方にお仕事としてお願いしています。古本は寄贈や遺品整理などで譲り受けたものが多いそうです。

最初の1年は、古本屋の隣が幼稚園ということもあり、親子に利用してもらおうと、絵本や児童書を置いていました。しかし古本屋は、近所のおじいちゃんやおばあちゃんのたまり場のように使ってもらっていることもあり、2ヶ月ほど前にライブラリーも趣向を変えることにしました。

村上さんは、城東区の社会福祉協議会の嘱託職員として相談員をやっており、去年10月から終活相談事業「ハッピーエンド」という終活の方法や遺品整理や財産管理などのサポートをしています。そこで古本屋と終活事業を組み合わせてみようと、古本屋に寄贈のあった終活に関する専門書をライブラリーで貸し出しできればと、ライブラリーに置くようにしました。

 

貸し出しが少ない、どうすれば?

趣向を変えてから、本があることは利用者に伝えているが、貸し出しが少ないことが気になっているという村上さんに対し、礒井さんから、まちライブラリーにとって「本を貸すこと」自体はあくまで活動の一部であり、もっとまちライブラリーを柔軟に考えてみてはとアドバイスがありました。たとえば、利用者さんにとって、終活について専門の本を読むよりは、詳しい人に終活でどうしたらいいかを説明してもらった方が大事なので、巣箱はインフォメーションボードのように使い、終活のことに関心を持って話をするライブラリーにしてはどうかと提案がありました。

 

巣箱の夢、広がる!巣箱のライブラリーあれこれ

後半はグループに分かれて、それぞれの近況を共有しました。とくに、ちとせのまちライブラリーでは森の仙人の後藤さんが巣箱グランプリを開催することもあり、全国のいろいろなところで巣箱グランプリが広がって、全国大会ができたらいいなと夢を語り合いました。また、鞄サイズでどこでも持ち運べる巣箱があると良いねという話が出たところも。

巣箱を運営している京都府綾部市の「めぐり文庫」の重本さんは、家の前から巣箱をはじめ、いま3つ目の巣箱を町内に置くために作っているところです。木工が得意な方に本箱の設計や制作を協力してもらい、仕上げは地域のこともたちと色を塗って完成させたそうです。植本祭をイベントとして行い、地域の方から本を寄贈してもらい、イベントに参加してくれた子どもたちが愛着を持って継続して利用してくれているそう。「無理せず、小さくやっていけるのが巣箱の良さ」というコメントがありました。

 

外からつながるLittle Free Libraryと内からつながるまちライブラリー

礒井さんからは、2014年マイクロ・ライブラリーサミットに登壇したLittle Free Libraryの創始者である故・トッド・ボルさんの紹介がありました。トッドさんは、仕事で挫折してしばらく家にいたときに、ガレージで廃材を使って巣箱を作りはじめたそうです。すると、作っている間にまちの人が “Cute!”と声をかけてくれ、そこからまちの人たちとつながりが生まれたそうです。「非日常だけど、居心地がいい」のがまちライブラリーのキーワードの一つで、雑然としたものよりは、トッドさんの巣箱がまちの人に“Cute!”と言われたように、相手に何か象徴させる目を引くものがあると、その場に溶け込んでいくといえます。

Little Free Libraryとまちライブラリーはある意味真逆の戦略です。Little Free Libraryは外側にアイコンを持ち、外の人を対象にしていて、まちライブラリーは家の中に本のある空間を作って外に広げていくので、トッドさんと礒井さんとで「両方組み合わせると最強だね」と話したそうです。

Little Free Libraryは縁側のようなもの。中に入らなくても中の様子がわかり、外の人が内に近づけるというのが大事です。これが巣箱をやっていく上での重視するポイントになるので、巣箱オーナーはそのポイントをうまく使って工夫し、反対に、いま家の中でまちライブラリーをやっている人は、今日の話から外とのつながりを作るヒントになればというお話がありました。

 

オーナーズフォーラムは、参加者の近況、運営の知恵・工夫やそれぞれの取り組みを聞き合う機会にしていきたいと思います。ぜひオーナーの皆様は、お気軽にご参加ください。次回は12月開催予定です。

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