まちライブラリーのオーナーたちがオンライン上で顔を合わせて、アイデアや悩みを共有する第17回オーナーズフォーラムを2023年8月30日に開きました。
■事例発表:はちとご文庫(茨城県 水戸市)
はちとご文庫は、茨城県水戸市の、茨城大学のすぐそばにある一軒家のシェアハウスです。シェアハウスの一角の本棚を、2022年11月にまちライブラリーとして登録しました。オーナーの板谷隼人さんは「住み開き」(自宅の一部を無理のない範囲で地域交流の場として開放し活用するというアサダワタルさんの造語:『住み開き 家から始めるコミュニティ』参照)に学生時代から元々興味がありました。友人とシェアハウスができる物件を探し始めた時に、庭に面した物件が見つかったのを機に住み開きを始めました。
まちライブラリーでは、シェアハウスに住む学生の他、近隣に住む高齢者の方や親子連れなどが同じ空間に集い、思い思いに過ごす場所になっています。「はちどこ読書タイム」という本を黙々と読む会や、大学生で絵本の読み聞かせをやってみたいという子が「絵本の日」を考案し、本のある人の集まる場所としての周知を兼ねてイベントを開催しています。他にも屋台で出張ライブラリーを行っています。
まちライブラリーを開設した時には、本のある場所の実践者の先輩たちに話を聞いてみようと「本と場づくりを語ろう」というテーマのオンラインでのトークイベントを複数回開催しました。
20代の板谷さんにとって、同世代の人たちはS N Sの影響で、すごい人がすごいことをしているのが目につきやすく、自分は何も出来ないと思い込む傾向があると感じていて、「やりたいことをやろうとなった時に、お金になることでないとやってはいけない」、「(活動は)すごい人だからできる」というのではなく、「誰でもが気軽にできる」という感覚を持ってもらえるように、さまざまな人に関わってもらう中で、意識して工夫しているとのことでした。
まちライブラリー提唱者の礒井さんからは、積極的に活動をする板谷さんの情熱の源、本音は何かという質問が。就職を機に住み始めた茨城県の筑波で、自分の周りに顔の見える関係ができて「暮らす」という感覚を得られた事がご自身の原点にあるという話が出ました。
2023年8月末現在のライブラリーの場所は、庭から入ってきてもらう必要があって、中の様子が見づらいこと、また開館日時が不定期で人が来にくいことが課題としてあることを挙げ、次なる構想は簡易宿泊施設付きの施設で、近隣の人にふらりと立ち寄ってもらいやすい物件が見つかれば移転を考えているとのことでした。
■まちライブラリー運営と寄贈本
後半は、参加のライブラリーオーナーさんの近況や情報交換やブックフェスタ・ジャパンでやりたいことなどを共有しました。そこで新規でライブラリーを始められたオーナーさんから出てきた悩みは、寄贈本の受付をどうしていくか、というもの。
まちライブラリーは、メッセージを付けた本を持ち寄り、まちのあちこちに小さな図書館をつくり、人と出会おうという活動です。寄贈者のメッセージと読んだ人の感想を繋ぐ「みんなの感想カード」を取り入れ、寄贈本を受け付けて運営するオーナーさんも多くいます。
ただ「まちライブラリーを開設する=必ず寄贈本で本を集めて運営すること」ではありません。どんな本棚にするか、寄贈を受け付ける、受付けないも含め、運営方法はライブラリーオーナーさんの判断です。寄贈を受け付ける場合も、受け入れる本のジャンルを絞ったり、本の状態を選んだり、ライブラリーそれぞれの方針で決めています。来館者が持ち込んだ寄贈本に対しての対応方法は、これまで運営を続けてきたオーナーさんたちが経験してきているので、具体的なアドバイスが多く、有意義な情報交換になりました。
ライブラリー活動全般に言えることですが、「〜になったらどうしよう?」「このやり方にしなければ!」と思い詰めるのではなく、まずはやってみて、何か自分の想いとは異なる出来事が起きて困ったら、その方針も柔軟に変えてみる。まちライブラリー提唱者の礒井さんからは、自分の活動なのだから、オーナーさん自身が好きなやり方で楽しめることをする、そして肩の力を抜いて取り組むことが大切とアドバイスがありました。