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キツツキ食堂まちライブラリー 探訪記

訪問&報告者:宝水幸代

訪問日:2023年4月21日

キツツキ食堂まちライブラリー

大阪市阿倍野区にある近鉄河堀口駅前にある、キツツキ食堂。

曜日、時間ごとにオーナーが変わるタイムシェア型の食堂です。モーニング、ランチ、ディナー、バーなど1日のうちにさまざまなシチュエーションが楽しめます。

そんなキツツキ食堂さんに併設されたまちライブラリーを訪ねました。

エコっておしゃれかもしれない

河堀口駅を出てすぐ。白い壁の建物の中にキツツキ食堂はあります。

取材に訪れたのはランチタイムとディナータイムの間の時間。仕込み中のいい匂いが漂う中、店内に入ってすぐに目を奪われた色とりどりの照明。

キツツキ食堂は、飲食店ではどうしても発生してしまう食べ残しや、売れ残りなどの無駄をゼロに近づけていくための取り組みを行なっています。そのひとつがこちらの照明だそう。

「ジャムの空き瓶で照明を覆ってみたのですが、なんかピンと来なくて。一緒に運営しているメンバーの発案でこういったデザインになりました」

 

取材に応じてくれた渡邉さんは、キツツキ食堂のほかに隣接する「くうそう雑貨店」や、近くにある「おまねき商店」などいくつかのお店を運営されています。

その雑貨店などでも過剰包装を避け、紙袋などをリユースするようにしているのだとか。

 

「この紙袋もそういった取り組みで集まってきたものを使っています。気軽に取り替えることもできて一石二鳥ですよ(笑)」

 

『すでにある』ものを組み合わせて作る工夫の中に、新しい美を見出す面白さを感じました。

 

「ここにしかない」人、本、場

まちライブラリーは2023年の1月に開設したばかり。

「まだまだ数は少ないのですが」と本棚を見せていただくと、背表紙に「ベントー」と書かれたアルバムが。

「あ、それは出店者のひとり『だし料理 有』さんのキャラ弁写真集ですね」

お子さんたちが学生だった当時、毎日作っていたお弁当を写真に撮って記録していたそうです。最近ではSNSに挙げている人も多いキャラ弁ですが、こうしてプリントしてまとめておくことで世界に1冊だけの本になるんですね。

 

「ここでしか見られない1冊っていうのが良いですよね」

 

食堂と雑貨店。やはり食やハンドメイドに関する本が多い中、就職やキャリアデザインの本が何冊か置いてありました。

ここに来られるお客さんの中で、キャリアコンサルタントに転身された方からの寄贈本だそうです。寄贈者の背景が見えるのも、まちライブラリーの面白いところ。

 

「本好きな人は多いけど、どんな本を読んでいるのかはわからない。自分ひとりだと好みが偏ってしまうけれど、こうして本をおいてもらえるようにしておくと『そんな世界があったのか!』に出会えるんですね」

 

まちライブラリーを取り入れたきっかけも、日替わりオーナーさんの発案によるものだそうです。

 

「水曜日のモーニング、ランチを担当している方がまちライブラリーのことを知っていて。面白そうだから取り入れてみようかなと」

 

さまざまな人が関わりながら、ゆっくりと「場」ができていく。そんな感覚が心地良いお店だと感じました。

 

手放すようで手放さない「ここにある」という安心感

さて、朝から晩まで開いているのでキツツキ食堂さんには、年齢性別問わずいろいろな方が来られるといいます。

Wi-Fiも使えるので、ここで軽く仕事の準備をしてから出勤される方がいたり、ランチからお茶の時間までママ友会が開催されていたり。そんな様々な人々が集うように、少しずつ様々な本が集まっていくのが楽しみです。

 

「本屋でも、つい自分の好みのものばかりに目が行きがち。こうして無作為においてある感は目新しいですよね。コメントがついていることも面白い。本の良さがより活きますよね」

良い本というものは所有しておくのもいいけれど、人にも読んでほしくなる。

古本屋に持っていくのともちがう。

誰かの手に取ってもらいながらも「ここにある」という安心感があるのかもしれません。

 

「これもひとつのリユース、リサイクルですね」

 

エコという観点からまちライブラリーを見てみるのも面白いかもしれませんね。

 

まちライブラリー探訪、わたしの楽しみ方

キツツキ食堂さんのある「河堀口(こぼれぐち)」という地名が気になり、調べてみました。

 

788年に守護職であった和気清麻呂によって着工し、徳川時代に大和川へ転流させることでようやく実を結んだ治水工事がありました。

その工事が行われた川の名は猫間川。昭和30年代に完全に埋め立てられ現存しない川ですが、その治水工事が始まった地点を河堀口と呼んだのだそうです。

長く続いた工事によってこの辺り一帯は湿潤地帯となったのですが、蛍の名所として知られるようになり、オンシーズンには出店が並ぶなどして賑わったようです。

現在は今回降り立った近鉄線の駅名にその名を残しています。

 

まちライブラリー探訪記を通して、こうした環境の変化とともに移りゆく歴史を垣間見るのも楽しんでいます。

みなさんもぜひ、いろいろな楽しみ方でまちライブラリーを訪れてみてください。

 

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