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第2回 オーナーズフォーラム (2021年3月13日)報告

開催日
2021年3月13日
開催ライブラリー
オーナーズフォーラム第2回報告

押し入れでまちライブラリー? 音声SNSで広がるつながり

全国各地のまちライブラリーのオーナーさんが情報交換などをする場として、2021年2月から「オーナーズフォーラム」が始まりました。2回目となる今回は3月13日(土)に開催し、約20人が参加。ライブラリー紹介では、平屋建ての民家にある押し入れで隣り合う形で運営している、2人のオーナーが登場しました。まちライブラリーができるまでの経緯や、コロナ禍でイベントができない中でSNSを使ったつながり作りなどを紹介しました。また、今回から新コーナー「今日のツッコみ!」がスタート。初回は、日本で最初のまちライブラリーである「ISまちライブラリー」(大阪市中央区)の会員属性を分析した結果を公開しました。このコーナーでは、今後もオーナーのみなさんの運営になどに役立つ情報をご用意する予定です。

 

マイ・ライブラリー紹介

引っ越しても存続 本棚のテーマは「つなぐ」

◇長谷川香里さん・つなぐデザインまちライブラリー(兵庫県たつの市)

姫路城が見える場所で10年ほどコミュニティスペースを開いていました。2015年に、まちライブラリー提唱者の礒井純充さんに姫路に来ていただいたことをきっかけに興味を持ち、2017年に自分の事務所(姫路市)の一部を使ってまちライブラリーを始めました。結婚を機に事務所を閉めたことなどがあって、現在はたつの市の築60年の平屋建ての建物で事務所兼まちライブラリーを構えています。二つ並んだ押し入れの片方が私のまちライブラリーで、もう一つが後で発表する堂野さんのものになります。私の本棚は、コミュニティ作りや地域のつながりにまつわる本が中心です。

本棚を中心に人が集うコミュニティスペースにしたいと思っています。ただ、今はコロナでイベントを開きにくいので、音声SNSの「クラブハウス」を最近使い始めました。まちライブラリーでは「植本」と呼んで、利用者に本を提供してもらう機会を設けているように、私のまちライブラリーではクラブハウス上で好きな本などを紹介してもらっています。本を実際にいただくわけではないので、ご紹介いただいた本はリブライズ(https://librize.com/places/1395)に挙げています。欲を言えば、リブライズにメモやタグ付けなどの機能があって、利用者にも見えるともっと楽しくなるかなと思っているところです。

 

 

本棚の配置に工夫 妄想スペースを確保

◇堂野能伸さん・妄想の種まちライブラリー(兵庫県たつの市)

長谷川さんと一緒に事務所を開くことになった流れで、僕もまちライブラリーを始めることになりました。一番大変だったのは、本棚を置く押し入れの床下の補強工事で、3カ月ほど掛かりました(涙)。僕は仕事で絵を描いたり、モノを作ったりしているので、本棚は仕事で集めた資料や図録などが中心です。また、あえて本棚で狭い空間を作っていまして、そこで妄想に浸れるようにしています。

それから僕も最近、音声SNSの「クラブハウス」を使い始めまして、ビブリオバトルをしました。「恋したいあなたに読んでもらいたい1冊」をテーマに、インスタグラムにビブリオバトルのページを作って、そこで投票するという形にしています。今後は定期開催していきたいと思っています。

 

SNS、工夫次第で近所とのつながり アナログとの融合も

2つのライブラリーの紹介に続いては、オーナーへの質問タイムです。

Q:ライブラリーのオープンの仕方について

A:長谷川さん

実は週の半分ほど、堂野は京都、私は名古屋に住んでいるんです。なので、ライブラリーを開けているのは週の半分くらいです。誰でも入ってOKなのですが、「開いてますよ」という案内はなく、家の門が開いているかどうかが目印となっています。

 

Q:長谷川さんは引っ越しをしながらも、まちライブラリーを続ける理由について

A:長谷川さん

「つなぐ」をテーマに仕事も活動もしているので、まちライブラリーの本を通して人がつながっていくということに共感しています。細々とでも続けていきたいなと思っているのですが、なかなか活用しきれていないのが現状です。

 

Q:お二人が理想とするまちライブラリーのあり方について

A:長谷川さん

本にまつわるイベントや企画をやりたいと思っているのですが、場所が落ち着かなかったり、コロナだったりで、できていません。自分の本棚の隣に他人の本棚があるという今の環境は面白いので、一緒に何かイベントをするなど考えたいと思っています。

A:堂野さん

町の伝承や伝説の調査書など、あまり売っていない本や図書館には並ばないようなキワモノを集めているので、興味がある人とつながっていけたらと思っています。

 

Q:「クラブハウス」を使うメリットについて

A:長谷川さん

個人的には、趣味が近い人と関わりやすくなっていると感じています。新しいつながりを作るのにすごくいいなと。私は毎日15分間、ルームを作っていて、そこにふらっとやって来てくれた人に本の紹介をお願いしています。ナンパみたいなものですね(笑)。

 

Q:私もスタッフもSNSが苦手です。私のまちライブラリーではSNSはフェイスブックだけ使っています。

A:堂野さん

僕は、クラブハウスを始める前はフェイスブックだけ使っていました。でも、クラブハウスを使うようになって、フェイスブックは知り合いだけのクローズな空間なのに対して、ツイッターやインスタグラムは外向きの発信力が強いと感じ、最近ツイッターとインスタも更新するようになりました。複数のSNSを絡めるのも一つの方法だと思います。

 

Q:僕はまちライブラリーがある地域だけに発信できればいいので、SNSを使うのはどうかなと思っています。紙製の通信を作って、知り合いに配ろうかなと。遠くの人とつながるというのは、今の僕のまちライブラリーとは違うかなと思うのですが、お二方の意見はどうでしょう。

A:長谷川さん

意外に、クラブハウスで近所の人とすごく会うんですよ。ルームのタイトルにエリア名を入れれば、そのエリアに関わりがある人が来ることがあると思います。

 

Q:クラブハウスというツールを使って、今まで出会えていない人と出会うチャンスができるかもしれないのですね。

A:堂野さん

近所に配る紙製の通信をインスタにアップするのもいいじゃないでしょうか。手書きのペーパーをSNSと絡めれば、興味がある人たちの間で広がっていくと思います。

 

手書きの感想をWeb本棚で紹介

長谷川さんの発表の際に「リブライズにコメントを入れられたらもっといいのに……」という意見が出たのを受けて、Web上の本棚サービス「ブクログ」を使って本の紹介をしているまちライブラリーの事例を紹介しました。

 

◇塚田真理子さん・Little Free Library & Museum 小さな帆(北海道北広島市)

アナログとデジタルの両方をうまく使いたいと思い、貸し出した本に対して寄せられた手書きのメッセージをブクログ上に入力しています(https://booklog.jp/users/tiisanaho)。また、ブクログ上で個別貸し出しの手続きをしていまして、「この本を借りたい」という連絡があると、Web上に「予約本です」という札を立てておくと、予約した方がまちライブラリーに借りに訪れるという流れで、デジタルとアナログ両方のコミュニケーションを楽しんでいます。

今日のツッコみ!

週6日スタッフ常駐 近隣順民の利用が増加

フォーラムの後半は、オーナーのみなさんの運営に役立つ情報をお伝えする「今日のツッコみ」コーナーです。まちライブラリー事務局スタッフの小野が、まちライブラリー第1号である「ISまちライブラリー」の会員属性について説明しました。またこの場所は、まちライブラリーの提唱者である礒井純充が育った場所でもあります。

 

◇ISまちライブラリー(大阪市中央区)について

ライブラリーの付近はオフィス街なのですが、最近はマンションが増えてきているエリアです。築40~50年のビルの3階にあって、分かりやすい場所ではないので、どうやってみなさんに来ていただくかが課題でした。

会員属性を分析するにあたっては、2011年からを前期、2017年からを後期としています。前期は、月1回「本とバルの日」というイベントを開いていた時期です。一方、後期は定期的に週6日ライブラリーを開けています。会員の方の居住地を調べたところ、ライブラリーのある中央区の住民が前期は全体の約6割だったのに対して、後期は約8割に増えたことが分かりました。イベントをメインにしていたときは遠方からの利用者が多かったのですが、日常的に利用できる形に変更したところ、近隣住民の方の利用が増えたということです。

週6日開ける形に変更した経緯について、礒井は「近くに『まちライブラリー@もりのみやキューズモール』ができたことが大きかったです。それまでは何かコンテンツがないと人は訪れないと思っていたのですが、キューズモールのライブラリーにはふらっとやって来る人たちがたくさんいたんです。もりのみやのライブラリーは商業施設の中にあるという特徴もあるのですが、清水の舞台から飛び降りる気持ちで自分のライブラリーを週6日開けることにしました」と説明しました。現在は、コロナの影響で利用者は減っているものの月間約240人で、前期のようにイベントをしていた頃に比べると十数倍になります。

 

看板にメッセージ 無人でも工夫次第で人の温かさ

説明を聞いた参加者から「人を常駐するようになって変わったことは何ですか?」という質問が出たのに対して、スタッフの小野は「前期の頃にはあまり来なかった近所の小学生が、宿題をしに来る場所になりました。また近くのオフィスで働く人たちが昼休みに本を借りにくるようになるなど、スタッフが常駐するようになって本が動き始めたと実感しています」と答えました。また礒井は「まちライブラリーによっては、常駐することが難しい場合もあると思います。無人でも、看板に季節に合ったメッセージをこまめに書くなど、人のぬくもりが感じられる工夫をしてはどうでしょうか」とアドバイスを送りました。

 

第2回オーナーズフォーラムは、それぞれのオーナーさんが抱えている悩みや実践しているアイデアを共有する場となりました。次回も、どうぞお楽しみに!

 

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