■第7回まちライブラリーオーナーズフォーラムレポート
「まちライブラリーで旅しよう」
まちライブラリーのオーナーたちが情報を交換する「オーナーズフォーラム」の7回目を8月21日にオンラインで行いました。事前に提供していただいた写真を見ながら、全国各地でそれぞれのオーナーが運営するまちライブラリー周辺の様子を紹介しました。
第一部の事例紹介では、静岡県伊東市と宮崎県小林市でまちライブラリーを運営する2人のオーナーが登場し、設立の経緯や運営の工夫などを紹介しました。
第二部の「まちライブラリーで旅しよう」では、旅情を感じるだけでなく、写真を通して様々な状況を伺うことが出来ました。
季節の花々、近くの図書館…お気に入りのスポットを紹介
スタジモにしのみや(兵庫県西宮市)の草間さんは、「阪急西宮北口から徒歩3分くらいのところにある商業施設です。屋外には広場もあり、子どもたちで賑わっています」と、広場の様子を送ってくれました。
「公園に挟まれていて、高齢者の方には良い散歩コース。夏は涼みがてらコミュニティセンターに来て新聞を読んで帰るというのが日課になっている人が多いです」と話すのは、なんぶまちライブラリー(大阪府守口市)の福山さん。
はるのうたまちライブラリー(兵庫県芦屋市)八幡さんは、お店の近くにある芦屋市立図書館の分室を紹介。「この辺りは打出の小槌とゆかりのある土地。作家の村上春樹さんの作品には打出分室や、分室裏のサルの檻がある公園が出てくるので、お客さんに案内している」と話してくれました。お気に入りだという「打出天神社」には、打出の小槌の石碑があるそうです。
コロナ禍の現状
中には、コロナの影響についてのエピソードを語ってくれる方も。つるがしまどこでもまちライブラリー(埼玉県鶴ヶ島市)の砂生さんは、市役所から見た景色とともに、「まちライブラリーはコロナで1年以上閉鎖しており、5回ほど再開の起案をしているものの、交渉の途中で挫折しているのが現状です」と話してくれました。
また、兵庫県養父市のももかまちライブラリー・河辺さんは、「コロナ下でカフェやまちライブラリーが機能しないことを悩んでいたところ、お寺でスタッフが描いたお地蔵さんの絵の展覧会を開くことができた」と、様子を写真で送ってくれました。
これからのイベントや再開のニュースも
千歳市からは市民の思いによりまちライブラリー再開が決まったニュースが届きました。
また、まちライブラリー@もりのみやキューズモール(大阪府大阪市)の川上さんは、建物の上にあるエアトラックを紹介してくれました。このエアトラックをみんなで走り、長野県茅野市を目指す企画がこの秋開催されます。
事例紹介①うさみみまちライブラリー(静岡県伊東市) 鈴木真紀子さん
宇佐美は静岡県伊東市というところにあって、熱海市と隣接しています。山と海に囲まれて、自然の他には何もないような街です。
私は東京と宇佐美の2拠点生活をしていて、そこで都会にはない豊かさを感じるようになった。伊豆で一番暮らしやすい街じゃないかと思うようになり、うさみみを作りました。
うさみみまちライブラリーは地域活性団体「うさみみ」が運営しています。2020年1月に定住促進を目的に発足。宇佐美のすばらしさを情報発信したり、宇佐美に関わる人たちとの交流・コミュニティを形成しています。その事務所を無料図書館として開放して、まちライブラリーを作りました。
うさみみの組織としては、事務局の他に、地元をよく知るエキスパートスタッフと、司書の資格を持ったり、地域活動に携わっている専門家などのアドバイザースタッフ、専門技術を提供してリアルなものづくりをするクリエイティブスタッフがいます。ウサミミストと呼ばれる方たちは利用者で、気軽に活動に参加していただいています。
無人でも、人の気配を感じるライブラリー
まちライブラリーは無人です。入口に利用説明書を置いていて、それを読んで使ってくださいというスタイル。まちライブラリーにある本は、郷土の伊豆にまつわる歴史や文化、地理の本のほか、伊豆の作家さんが描いた絵本が多いです。
スタッフはいないのですが、なんとなく人を感じるような、会わなくても人の気配を感じるというのは自分たちらしいなと思っている。石ころアートをしている人は素敵な石を置いていっているのだけれど、私はまだその方にお会いしたことはないんです。直接の交流はなくても、どこかでゆるく利用者がつながっています。
地域の方とつながることができたので、例えば津波や自然災害についてのシルバー世代の体験を本にまとめるなど、何か一緒に出来ることを考えています。もう一つは「地域を超えてつながる」ことです。まちライブラリーのオーナーのみなさんとこうやって繋がることができたので、一緒にできることがあったらぜひお願いしたいと思っています。
事例紹介②まちライブラリー@TENAMUビル(宮崎県小林市) 白谷篤さん
宮崎県小林市という場所は、星、花、ホタル、湧水が有名な街。お肉も有名なので、牛とコスモスを模したキャラクターのコスモがいます。人口は4万人の小さな町です。そしてTENAMUビルというところは、6年前にシンボル的なスーパーが閉店後「中心市街地にもう一度にぎわいを」ということで会社を立ち上げ、スーパーの跡地に作った交流拠点です。TENAMUの由来は、宮崎の方言です。手をつないで一緒に歩くという意味。「てなんでいこう」というと、一緒に行こうという意味です。
どうやってコミュニティを作るか考える中で、まちライブラリーを知り、本に付けたメッセージを媒介にしてつながりが生まれるきっかけになるのではないかということで始めました。本を起点にイベントや講座を開いています。この交流スペースは小林市の公共施設となり、面積は約360㎡、寄贈本数は約4000冊。寄贈する方が増えていて、蔵書は5000冊になりそうです。
本に興味がない人にも興味を持ってもらえるように
つながり作りの仕掛けとして掲示板を置いて、開催してほしいイベントや欲しい本、イベントの中身などを、掲示板を通して来場者に聞いています。問いかけに対して「いいね!」シールを貼ってもらっています。
また、小林市民大学という、生涯学習講座を定期的に、月2回くらい開いています。テーマは国際交流と健康です。図書館というよりコミュニティスペースの機能が強いので、わいわいとイベントも開いています。去年のブックフェスタでは、本を使った朗読劇を行いました。
今後は本を中心にしたコミュニティや本について語るイベントをもっと開きたいと思っています。本に興味がない人にも興味を持って参加できるものを考えていきたいです。またインスタグラムを活用しての音楽イベント、小林市立図書館とコラボして絵本や図書館カードつくりのイベントを実施しました。インスタグラムもぜひフォローしてください!