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第10回オーナーズフォーラム(2022年4月20日)報告

開催日
2022年4月20日
開催ライブラリー
まちライブラリー

■第10回まちライブラリーオーナーズフォーラムレポート

 

まちライブラリーのオーナーたちがオンライン上で顔を合わせて、アイデアや悩みを共有するオーナーズフォーラムを4月20日に開きました。

 

事例紹介には、名古屋市内の店舗で始めた無人ライブラリーと京都市内で7拠点を展開するライブラリーが登場し、それぞれユニークな取り組みを発表しました。

 

フォーラムの後半では、まちライブラリーの広報の仕方や感想カードの使い方などオーナーたちが日頃抱える疑問を話し合うことで、運営のヒントが得られた様子です。

 

今回でオーナーズフォーラムは10回目を迎えました。

 

ご興味をお持ちの方は、どうぞお気軽にご参加ください!

 

まちライブラリー@誰もいない店RIGHTS

図書館を開く夢 無人運営で解決!

最初の発表は、名古屋市で今年3月から「まちライブラリー@誰もいない店RIGHTS」を始めた小松裕子さんです。本好きの小松さんは蔵書管理サービスの「リブライズ」に興味があり、「いつか図書館をやってみたい」と思っていたとのこと。

 

その願いの原体験は、小学生の頃に遡ります。図書館で手に取った一冊は面白い本もあれば、つまらないものもあったけれど、行くたびに借りて読むことが楽しかったという思いが今も残っているそうです。

 

家の近くで、知っている本も知らない本も手に取ることができる場所があるといいなと思っていたときに出会ったのが「誰もいない店RIGHTS」でした。フェアトレードや手作りの雑貨を扱う店内にスタッフはおらず、お客さんは商品の代金を箱に入れる仕組みで運営していたのです。小松さんは「ライブラリーも無人でできるのでは?!」とひらめきました。

 

 

情報共有 繋がるまちライブラリーの仲間たち

まちライブラリーを始めようと思い立ったものの、不安もあります。そこで小松さんは、無人で運営しているまちライブラリーを検索し、静岡県伊東市の「うさみみ まちライブラリ―」にメールで運営方法の相談をしたそうです。

 

「突然のメールにも関わらず丁寧な返事をいただいて、『まちライブラリー』のつながりの強さを感じました」と振り返ります。アドバイスもあって、小松さんのライブラリーでは本を借りる際は、貸し出しノートに日付と本のタイトル、借りる人のニックネームを書いてもらう運用としています。「お店の商品が無くなったことはないので、本が無くなることもないかなと思い、借主の連絡先は確認していません。また個人情報の保護のため。ニックネームを書いてもらっています」と説明しました。

 

この日のフォーラムには、相談に乗ったうさみみ まちライブラリーの鈴木真紀子さんも参加しており、「無人運営の仲間ができたという感じで嬉しく、今やっていることをお伝えしました」と話しました。

 

小松さんと鈴木さんが顔を合わせたのは、この日が初めてだったとのことで、二人が画面上で笑顔で挨拶する姿が印象的でした。

 

まちライブラリーを始めて1か月ほどが過ぎ、小松さんは小さなライブラリーでも近くにあると、本に触れる機会は各段に増えるということを実感しているそうです。「私自身、気軽に始められたので、周りの人にもまちライブラリーのことを知ってもらいたいと思っています」と話しました。

 

ルーミー図書館

コロナ禍で「絵本を借りられない」 ママ友たち3人で活動開始

続いての発表は、京都市東山区で「ルーミー図書館」を運営する小原亜紗子さんです。

 

2人の子どもを育てる小原さんは、2020年春の新型コロナウィルスの感染拡大による保育園の休園の影響で、仕事と育児に追われました。「しっちゃかめっちゃかな毎日に行き詰まりを感じました」と振り返ります。上の子どもは本が好きなものの、家にある本は読み尽くしてしまった上に、登園できるようになった保育園では感染予防のため本を借りられませんでした。

 

本屋にも図書館にも行けない状況を何とかしようと、ママ友と絵本の貸し借りをスタート。2人で交流するうちに、同じ悩みを抱えている人は他にもいるのではないかと思い、近所に住む絵本が好きな高齢の方も合わせて3人で「東山区まちじゅう図書館プロジェクト」を立ち上げました。

 

 

拠点づくりで地元の理解促進 行政も後押し

プロジェクトに参加するライブラリーは、家の前に小さな図書箱を置いて、誰でも気軽に借りられるスタイルで、現在は7カ所に広がっています。

 

賛同してくれる仲間が広がったきっかけの一つは、小原さんが不動産事務所を構えた際に、2階をまちライブラリーに改修して活動拠点としたことです。

 

地域の子どもたちと一緒にDIYのワークショップで本棚などを作って「ルーミー図書館」をオープンしたことで、地域の理解が深まりました。また、地元の京都新聞で取り上げられた記事を見た人のつながりで仲間が増えたほか、少子高齢化対策の一環として東山区が協力してくれていることも活動を後押ししています。

 

 

活動拡大の秘訣は「運営側が楽しむこと」

質疑応答では、小原さんのように自分のエリアで複数のライブラリーをつくることを検討しているオーナーが「ネットワークを作る上で、運営方法のルールはありますか?」と尋ねました。

 

これに対して小原さんは「決まりは何もありません。メンバーはママ友だったり、行きつけのお店の人だったりで、みんな近所で何かしら繋がっている人たちなので定期的なミーティングもしていません。本の貸し出しのルールも、それぞれが何となくでいいかなと思っています」と緩やかな繋がりであることを紹介しました。

 

また、埼玉県鶴ヶ島市内を中心に13カ所を展開している「つるがしまどこでもまちライブラリー」の砂生絵里奈さんは「活動を広げようと、協力してくれそうなところを聞いて回っていたときは広がらなかったけれど、肩の力を抜いて活動を楽しむようになると、『私もやってみたい』という話をもらうようになりました」と自身の経験を伝えました。

 

 

保育園回り、イベント開催…… ライブラリーの認知拡大にアイデア様々

後半の意見交換では、フォーラム前半で事例紹介をした「まちライブラリー@誰もいない店RIGHTS」の小松さんが運営初期に抱いている疑問を中心に話し合いました。

 

まずはSNSなどのまちライブラリーの広報の仕方についてです。

神奈川県座間市で始めて1年ほどが経つ「まちライブラリー@ざま☆ほしのたに文庫」の飯島公子さんは「当初は広報活動がうまくいかず、フェイスブックやインスタグラムのフォロワーは増えませんでした」と苦笑い。そこで、絵本の蔵書が多いことから近隣の保育園回りに取り組みました。インスタのQRコードを載せたポスターやリーフレットを持って行ったところ、リーフレットを保護者全員に配布してくれた園もあり効果的だったそうです。

 

また、まちライブラリーの認知拡大の一環としてイベントに取り組んでいるところもありました。大阪市東淀川区の「井高野よってっ亭まちライブラリー」では手話サロンを開くと新しい利用者が訪れたとのことで「やっぱりイベントって大きいなと思いました」と話しました。今後もイベントをきっかけにライブラリーを知ってもらう方法を考えているそうです。

 

ライブラリー運営費は「趣味の範囲内で」 遊び感覚忘れずに

まちライブラリーでおなじみの「感想カード」の利用についても意見を交わしました。

 

寄贈者に必ず感想カードを記入してもらっている大阪市中央区の「まちライブラリー@もりのみやキューズモール」の川上律美さんは「中には、書くことをためらわれる方もいますが、感想カードを通じて人と繋がっていくことや、書くことで『自分のライブラリー感』が出ることを伝えると理解していただけます。本を借りる方も書いてくださるケースが多く、感想カードが3冊ほどに連なっている本もあります」と紹介しました。

 

感想カードを利用していないオーナーの一人は「感想カードがあることで、本を手に取った人が読んでみようかなというコミュニケーションが生まれるんだなと思いました。私も少しずつ書いてみようと思います」と話しました。

 

最後に、まちライブラリーの運営費についての質問に、まちライブラリー提唱者の礒井純充さんが答えました。「場所を借りるとなると、運営のハードルが高くなってしんどくなってしまうので、趣味の範囲内で運営する分には負担にならないと思います。また運営する際も『インスタのフォロワーを増やさなきゃ』『借りてもらわなきゃ』と思い詰めると、楽しさを見出せなくなってしまいます。遊びという感覚が一番長続きするし、長続きすることが人生で大切なことではないでしょうか」と締めくくりました。

 

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