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まちライブラリー@幸教寺 探訪記

訪問&報告者:スミレ

訪問日:2025年2月8日

まちライブラリー@幸教寺

まちライブラリー@幸教寺へ

朝8時30分JR鶴橋駅で下車。
改札を出て右に曲がった瞬間目に飛び込んできた景色にテンションが一気に上がった。
カラフルなネオンの看板に彩られ、韓国の市場に来たのかと錯覚してしまう「鶴橋商店街」の細長い通路が伸びていた。
キンパやキムチ、出来立てのチヂミがもうすでに店頭に並び始めている。

Googleマップを片手に右に、左に幾つかの路地を抜け、大通りを渡り歩いていくと静かな住宅街になった。
こんな場所にお寺が?
駅を降りてから約15分、少し不安になりながらも歩いていると、一瞬見逃しそうになるほど街に溶け込んでいる「幸教寺」に到着した。約束の時間よりすこし早かったなあと門の前から中の様子を伺っていると、「おはようございます」と僧侶の大塚さんが声をか
けてくださった。

本堂の脇の通路を進みガラスの引き戸をあけると、お寺の雰囲気とはガラリと違い真っ白な壁と優しい木の素材を基調にした明るい空間が迎えてくれた。
引き戸の上にはお釈迦さまの置物、凱旋門の形をした花瓶に生けられたドライフラワー。
玄関の奥の部屋にはガラス製のハンギングポットが天井から吊り下げられ、流木のオブジェが置かれている。
御住職さんはなかなかのインテリア好きらしい。

部屋の真ん中で、「ちょっと見てください」と言われて顔を上げると四角く切り取られた天井は吹き抜けになっていた。
「この上がちょうどまちライブラリーになるんです」
急な階段を登り和室を抜けると光がたっぷりと差し込む優しい空間「まちライブラリー@幸教寺」があった。吹き抜けの周りを囲むように本棚が設置されている。

御住職の仏教書がずらりと並んでいるが、他にもビジネス書、自己啓発本、絵本やインテリア、 手作りアクセサリー、面白いところでは着物やお酒の本などなど、ご近所の皆様からの寄贈書がきちんと整理され並んでいる。

 

しばらくすると吹き抜けの下から「どうも」という優しい声がした。

御住職の石原さんだった。

なぜまちライブラリーをお寺の中に作ろうと思ったのですか?

1つは “地域の人たちがより合える場所を作りたい”という点でまちライブラリーの考え方に共感したんです。

最近、商業施設やカフェなどが単なるお店ではなく、人々が落ち着ける場としてデザインされてるとこって多いと思うんです。都会の中なのに心が安らぐ場所があるっていいなあって。

そのとき「それってお寺じゃなかったけ!!??」
歴史的に見てもお寺は単なる宗教施設じゃなくて、地域の人々が集まり安らげる場として機能してきました。だから、お寺の中でまちライブラリーをすることは別におかしいことではないなと思ったのが1つ目の理由です。

2つ目は仏教に関連するんですけど、お釈迦様っていう人はいろんなことをお伝えくださって、基本的には智慧と慈悲を大事にするんです。
智慧っていうのは、わかりやすく言えば学びを深めること。
自分のことにしろ、世間のことにしろ、あらゆる物事を学ぶ。そして、学んだ上で自分に何ができるのかなっていうことで、慈善活動をする。つまり智慧を伝える、これが慈悲。智慧と慈悲はセットなんですね。で、そういう智慧を伝えるっていうところで法話や座禅をするんですが、もっとわかりやすい方法ないかなと思った時に、智慧の『共有』っていうのをしたいなと思ったわけですよ。

それがまさしくまちライブラリーを通じてできると思ったんです。
たとえば読書会をして仏教の考え方を絡めて、生活に根ざしたもとして広めていく。
そして日本の文化を見なおしていきたいなって人が1人でも増えたらいいなと思っているんです。

本にまつわるエピソードって何かありますか?

本ってすごい可能性を持っているって気づいたとき感動したんです。
大嫌いでまったく興味がなかったことも、本のちょっとした面白おかしいワードを見つけてしまったら、なんか興味が湧いてくる。興味関心の対象に持っていくことができるものが本であるって気づいたとき感動したんです。
でね、、、、(石原さんは間を開けて声のトーンを少し落とした)
私、数学大っ嫌いなんですよ。良い点取ったことなくて。嫌いで仕方ないんですけど『面白い数学』『3ヶ月でマスターする数学』みたいな本が最近たくさんあるんですよね。
その中に、『ブラジャーの曲線、これ微分積分の応用だよ』っていうのを見つけてしまって。そしたらなんか気になってくるんですよね。微分積分なんてなんの興味もないんです。ないのに、下着の実は、、、とか言われたら、えっっ?!振り向いてしまう。
そういう風に、ちょっと面白おかしいワードを含めると、これまで縁遠いものだった数学が急に興味の対象になった。そこにすごく感動したんですね。
これを続けて、自分の興味関心事が向けられさえすれば、自分の心の視野、世界ってもっと広がるんじゃないかなって。
その可能性を本は持ってるんと違うかなと思います。

今後まちライブラリーをどのようにしてしていきたいですか?

お寺ですから、伝統文化ですとか、仏教思想がテーマなんです。それを全面的に押し出したような場所にしたいと思っています。
だけれども 例えばキリスト教であっても、外国の方であってもいろんな人が来て、クローズドなこの場限定、今日1日限定で自由に会話をしよう!熱く語ろう! みたいな場所の保証はしたいんです。
もともとお寺は公的な機関を担っていた歴史があるので、公正公平だと思うんです。
そこに原点回帰して、お寺だからこういう発言は避けとこうとかっていう感じにはしたくないんです。
仏教の考え方がそもそも結構寛容なので
「読書会するけど、ちょっと仏教的な観点から、住職さ、一緒に参加して教えてよ」みたいに言ってくれると嬉しいです。まちライブラリーでは僧侶石原ではなく一個人として向き合っていきたいと思ってるんですよ。そしてそういう場所をみんなで作っていこうよっていうのがいいかなって。

 

インタビューを終えて

私たちは普段意識せずとも仏教の教えや日本の伝統文化に触れて生活しています。
この先の人生、身体も心も健康に、豊かに生活していくためにそれらを改めて見直す。
そのきっかけを「興味の種」が芽吹くまちライブラリー@幸教寺で一緒に作って行きたいなと思いながら幸教寺を後にした。

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