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奈良県立図書情報館 乾 聰一郎さんが書評を書いてくれました

学芸出版Webサイト おすすめの1冊より

『本で人をつなぐ まちライブラリーのつくりかた』

この本を読んでいて、日本には「公共」と「私(個人)」はあるが、「公」と「共」と「私」という括りが無いという話を思い出した。日本では「公」が「共」も担い、だから「私」は「公共」に対して要望し、与えられることが常態となってしまっているというのである。

著者は、この「公共」のサービスが過剰だという。「私」は自ら何かをつくり出す存在ではなくなってしまっているというのである。だからこそ、著者は、「私」が想いと志をもって、あるいはまた、それに共感する人々とともに「共」の場をつくることにこだわるのである。組織を動かし最大公約数的に生まれてくるものではなく、個人がその手の届く範囲で、他者の協力も得ながら創り出すミクロな共生空間とでもいうべきものである。それが紆余曲折を経て、「まちライブラリー」として結実するのである。そのような著者の発想のもとになった本がもつ属性や本をめぐる人との関わり、さらには図書館という場へのまなざしは鋭く的確である。図書館をはじめとする公共や企業といった組織への痛烈な問いかけにもなっている。
本書は、そこにいたる前史から始まる。組織人として事業を進めるなかで、自己の想いを実現しようと猛進し、達成したかに見えた先の挫折。失意のなかでの“師匠”友廣裕一さんとの出会い、そして再出発。この一連の物語は、失礼ながら一篇の青春小説を読んでいるようだ。挫折から立ち上がる姿には、爽快感と可能性への信頼感が満ちている。そして、まち塾@まちライブラリーの立ち上げから、ISまちライブラリー、そして大学と市民との協働でつくりあげたまちライブラリー@大阪府立大学をはじめ、全国に広がるまちライブラリーやマイクロライブラリーが興味深いエピソードとともに紹介されている。
「個人」の第一歩から始まり、やがて縦横に繋がり形成されていくまちライブラリーというコミュニティに、新たな共生空間の可能性を見ることができる。そして本書は、なにより「個人」の想いをかたちにするための一歩を踏み出す勇気を与えてくれるのである。

乾 聰一郎(奈良県立図書情報館)

 

岡本真さん(アカデミック・リソース・ガイド)書評も併せて学芸出版のホームページに掲載されています。

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