探訪&報告者: 宝水幸代
白砂青松が美しい「二色浜」や、昭和の経済を支えた紡績業で知られる大阪府貝塚市にある「ホンノわとわ」さんを訪ねました。
介護ショップわとわさんの玄関先に置かれた、巣箱型のまちライブラリーです。
のどかな南泉州のまち、貝塚市西町。
ここにまちライブラリー「ホンノわとわ」さんがあります。
介護ショップに設置されている、巣箱型のまちライブラリーです。
運営者の湯浅さんは、ここで週に1度開催されている放課後子ども教室「おいでよわとわ」のスタッフをされています。
「もともと毎週水曜日にやっていたそうなんですけど、夏休みのイベント時くらいしか子どもたちがこない。
恒常的に来てもらえるように、というわとわさんの想いと、私のまちライブラリーをやりたいという想いが重なった感じです」
現在、中学生になる娘さんが小さかった頃からまちライブラリーをやりたかったと話す湯浅さん。
「はじめは貝塚市の図書館に相談しに行ったのですが、図書館では難しいと断られました。
その後市役所へ行き、教育委員会社会教育課を紹介されました」
そこで、介護グッズの販売やレンタル、また介護についての相談などを受けられているわとわさんを紹介されたのだそう。
「わとわは利用者さんが編み物サークルを開いたり、絵手紙教室をやったりと地域のコミュニティ的な場所になっています」
そのわとわさんで開催されている放課後子ども教室を紹介され、スタッフとして入ることに。
本棚も開設していいということで、お子さんを連れながらゆるく活動させてもらうことになったのだそうです。
個人の力が何かを変える。ゆるくても良い。
「これ!礒井さんにサインしていただいたんです」
『まちライブラリーのつくりかた』を読み、「個人の力で何かを変えることができる」ということに感銘を受けたと話してくれました。
「実際にお会いしたとき、本を書いた人に会える!とドキドキしたのですが、ご本人は『やあ、どうも』という感じで飾らなくて。
そういうところにも安心したし、ほんまにひとりでも、小さくても良い。
ゆるくやっても良いんやなって思えたんですよね」
放課後子ども教室で毎週読み聞かせをしたり、本棚の本をどうやったら借りてもらえるかを考えたときもあったそうですが、だんだんと力が抜けていったそう。
現在は「まんまある」という、もりのようちえん活動に絵本などを持っていき、「読んだり読まへんかったり」しているのだとか。
「なんか、てきとうに子どもたちが本を手に取ってくれたりしたらええかな」
一緒に活動している仲間が作ってくれたという幟。
イベントの際に登場するそうです。
とってもかわいらしいし、「まちライブラリーのつくりかた」の表紙デザインともマッチしていますね!
古くから文化のあるまち、貝塚
隣に城下町として有名な岸和田市に対し、お寺が治めてていたという貝塚市には、たくさんの寺院があります。
今回は、そんなお寺が多く残る寺内町にある、喫茶トランクさんで取材させていただきました。
「どうぞ」と渡されたメニューにびっくり。
漫画本にメニューが!
「ここ、面白いんですよ。そこに本棚もありますよ」
「じつはここで読書会を開かせてもらったりしています。雰囲気もいいしね」
貝塚市は室町時代に浄土真宗が広まり、寺内町ができていったとか。
1583年〜1585には本願寺がおかれるなど、深い歴史を持つまちです。
また、明治時代から紡績業が発展、昭和初期には大日本紡績(現ユニチカ)も誘致され、全国から主に女性が「女工さん」として出稼ぎに来ていたそうです。
「女工さんたちの娯楽として、映画館なんかもあったらしいですよ」
古くから豊かな自然に囲まれ、寺院文化が根付き、明治から昭和にかけての経済発展に大きく貢献してきたのですね。
本を通じてひととつながる
貝塚市をはじめ、周りのまちライブラリーとの交流も大切にしているという湯浅さん。
SNSを通じた情報共有や、本の交換会なども行なっているそうです。
「本って、自分の好きなものしか読まへんくなるでしょう。
でも、人の本棚を見たら知らない本に出会える。
人の背景が見えるというか。
それはまちライブラリーの大きな魅力やと思うんです」
また、新しいメンバーが本の巣箱を作ろうとしているなど、本を通じた人の輪が広がっているのを感じていると話してくれました。
「やりたい」という思いから、なんとなく道がつながっていったと感じているそうですが、ゆっくりと、でも着実に活動している姿が印象的でした。
最後にひとつ聞いてみました。
まちライブラリーを運営する、一番のモチベーションは何ですか?
「小さい規模でも、個人からでもできることがあるということがうれしいんです!」