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第二号(2019年2月)

立春を迎え、暦の上では春になりましたが、まだまだ寒い日が続きますね。皆さんはどんな2月を迎えておられますか。

先日、案内をいただいて『京都「私設圖書館」というライフスタイル』という本を手に取りました。著者の田中厚生さんは、京都市の銀閣寺近くで「私設圖書館」という自習室型のライブラリーを営んでおられる館主です。この本を読んで、田中さんとの出会いを思い出しました。

2013年、マイクロ・ライブラリーサミットを開催することになり、私は発表館候補のひとつとして田中さんを訪ねました。当時、まちライブラリーはまだ40ヵ所にも満たないぐらいでしたが、ISまちライブラリーができ、まちライブラリー@大阪府立大学の立ち上げが目前に迫り、私にとって小さな図書館活動の模索期でもありました。

昭和48年―私が中学生のときです!―に開館した「私設圖書館」は非常に重厚な雰囲気の場所でした。当時のお話とこの本から、田中さんが個人主義を非常に大事にしている人だということを思い出しました。そして、私の中学校の恩師が個人主義と利己主義は違うと常々言っていたこともあわせて思い出されました。

私自身を振り返ると2003年、六本木ヒルズに今までにないタイプのライブラリーを作ってみようという思いから、六本木アカデミーヒルズという会員制有料図書館をつくりました。当時は、田中さんの存在さえ知らなかったのですが、いわゆる官の公共ではない私的な公共を作ろうとした点では共通していたと思います。この本を読んで、田中さんは収益的に厳しい中で、公立図書館を補い、勉学に集中できる「私設圖書館」環境をつくり、愚直に長期にわたり続けてこられたことに尊敬と感動を覚えると共に、それぞれの歩んできた道に思いを馳せたのでした。

今回皆さんにお伝えしたいのは、田中さんのように、個人の思いが不可能だと思われるようなことを社会的に実現していく力の原点についてです。組織に頼らず、現代の流れゆく社会の中では不器用な生き方かもしれませんが、それ故に自分のやりたいことを貫徹していくその力は、岩手県大槌町の佐々木格さんの「森の図書館」や「風の電話」のように組織ではなしえない社会の宝を作り出します。(拙著『まちライブラリーのつくりかた』ご参照)

新しい流れは決して主たる活動の中からではなく、常にあぜ道のようなところから生まれるのではないでしょうか。「私設圖書館」が数十年の間に50万人以上の利用者を得たということは、そのあぜ道をよしとする人がたくさんいたことを示しています。利用者の中には、この場所があったから資格試験や受験に成功したという人や、居場所として貴重だったという人もあって、これはまちライブラリーにも通じると思います。

田中さんとお会いしてから6年近い歳月が経ち、まちライブラリーは600ヵ所以上増えました。皆さんそれぞれの思いで、まちライブラリーをやっていると思います。愚直に自分の思いをぶつけ続けてください。きっと皆さんの宝物になると思います。

 

最後にまちライブラリーの今後の予定をひとつ。3月2日(土)12時から16時まで、東京都奥多摩町の廃校にできた、まちライブラリー@奥多摩ブックフィールドで春の開所式を行います。まちライブラリー@奥多摩ブックフィールドは、旧小河内小学校で小河内ダムの湖畔に建つ、木造の素敵な校舎の旧職員室に誕生しました。ドイツ語研究をされていた大学教授の本やアートに関する図録や本など約6000冊以上収蔵しています。12月~2月まで冬期閉館中ですが、3月から開館です。当日は蔵書の閲覧や一箱古本市、校庭ではバーベキューもします!皆さん、ぜひ春の奥多摩の風に吹かれに来ませんか。お待ちしています。

 

2019年2月

まちライブラリー提唱者 礒井純充

 


 

第一号(2019年1月)

新しい年が始まりました。本年もよろしくお願いします。

2019年1月年初の段階で、まちライブラリーは約660ヵ所近くになりました。1年で130カ所程度増加しているペースです。昨年は北海道から九州まで全国いろいろなまちへうかがうことができ、たくさんの人との出会いを得ました。お話を聞かせてくださった皆さん、本当にありがとうございました。

中には、まちぐるみで進めているまちライブラリーもあり、昨年は岩手県雫石町、埼玉県鶴ヶ島市、兵庫県加西市、岡山県津山市を訪問することができました。お話を伺う中で、同じ活動をやっていても「楽しい、楽(らく)」という人と、「負担だ」と思う人の大きく分けて2通りあることが見えてきました。

まちライブラリーは結果を追うのではなく、あくまでもそのプロセスを楽しみ、その中で、やる気を起こしたり、気づきを得たりする活動です。出会った皆さんのお話からそのことを改めて振り返ることができました。今年は私自身もその原点を確認し、再挑戦の年にしていきたいと思っています。

まちライブラリーをやっている人の約7割が個人で、約3割が団体や企業、行政の運営です。全体の1割ぐらいは閉館しているところもありますが、辞めた人の中にも気付きがあることもわかってきました。たとえ形のうえで継続していなくても、結果的にこれを機会に自分らしさを見つけることができればそれもいいと思います。

企業や行政が運営に関わるまちライブラリーでは、新たな挑戦が始まっています。9月にオープンする東大阪市文化創造館で新たなまちライブラリーが誕生し、大阪ではまちライブラリー@大阪府立大学、まちライブラリー@OIC(立命館大学大阪いばらきキャンパス)、まちライブラリー@もりのみやキューズモールに続いて4つ目の大型のまちライブラリーとなります。東京では、2019年11月頃に南町田の駅前にできる商業施設と公園の境目にコミュニティセンターができ、その中にスヌーピーミュージアムが運営するカフェとまちライブラリーが誕生する予定です。

 

また、北海道千歳市ではまちライブラリー@千歳タウンプラザが3年目に入ったのを機に、小さな巣箱型のまちライブラリーを市内に広める活動をしていきたいと思っています。 香川県丸亀市では、地区センターにもまちライブラリーができ、市のコミュニティセンターに拡大していければという活動になってきています。

私の個人的な活動としては、2016年以来、大阪府立大学大学院で、まちライブラリーを地域の場づくりのひとつとして研究してきましたが、その成果を研究論文にまとめる段階に入ってきました。皆さんから現場の声を聞かせていただくことがさらに多くなるかもしれませんので、よろしくお願いいたします。

現代のグローバル化した社会の中で、存在感を持てないという個人が新たな意欲をもって楽しく生きていく方法がないかとスタートした活動でしたが、研究をとおして、楽しさやワクワク感が極めて人生にとって大事なのだということに、改めて気付かされています。そうした喜びをもってやっている人たちの事例などをまちライブ04号で報告する予定です。春先には発行できると思いますので、ぜひご一読ください。

今年も関西地区では4月~5月にブックフェスタを行います。積極的に参加していただき、一緒に楽しみましょう。期間中にはマイクロ・ライブラリーサミットも開催しますので、全国のマイクロ・ライブラリー活動の一環としてご自身の活動を紹介したいという方はぜひ報告してください。また関東地区や他の地区での報告会も企画中ですので、そちらにもぜひ参加していたければと思います。

これまでのまちライブラリーの活動をとおして、人間が自分に自信を持って生きていこうとする中で、楽しい人の周りに人が集まりそれがその人の生甲斐になるということに気付かされました。私もまちライブラリー全体を楽しくまとめていきたいと思います。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

2019年1月

まちライブラリー提唱者 礒井純充

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