ニュース

ホンノワ 探訪記

訪問&報告者:宝水幸代

訪問日:2023年3月9日

ホンノワまちライブラリー

大阪府泉大津市。奈良時代には和泉国の国府の外港(国津)として栄えたことからその名が付いたそうで、古くから随筆や紀行などに登場するほど深い歴史のあるまちです。そんな泉大津の巣箱型まちライブラリー「ホンノワ」さんを訪ねました。

 

運営者である高島さんのご自宅前に、赤い本箱がありました。近くを通る子どもが手に取りやすいよう、子どもの目線に合わせて低めに設置されています。中に並んでいるのは絵本や児童書など。本は、寄贈本が中心です。

ちなみに、本箱は高島さんのお父様の手作りだそうです。

 

もともと泉大津のご出身。進学で上京後、そのまま就職し結婚。東日本大震災ののち帰って来られました。その後、第2回マイクロライブラリ―サミット(2014年)にてLittle Free Libraryを知ったことがきっかけで始められたそうです。

 

「生まれ育った場所なのに、まちとのつながりがない気がしていたんです。なにか地域とつながれることがしたいなと思っていたときに出会ったのがまちライブラリーでした」

そうして、近所の友人とともに自宅前に本箱を置く「ホンノワまちライブラリー」が誕生しました。

 

ひとつの本箱が、見る世界を変えてくれた

 

本箱を置くようになってから、地域の人と話すことが増えたという高島さん。

 

「本箱を置くことで、ここが開かれた場所だということが伝わるのかもしれません」

 

もともと、特別まちづくりに興味があったわけでもなく、ましてや一市民である自分が関われるとは思いもしなかったそうですが、本を置く活動に参加することで何となく関われるようになったと感じているそうです。

いまでは泉大津図書館シープラの図書館協議会で、市民委員も務めていらっしゃいます。

 

「たったひとつの本箱が、見る世界を変えてくれたと実感しています」

 

まちの本屋さんが減っていく中、こうした小さな本箱活動が広がることで、子どもたちが本に触れるきっかけが増えたらいいなと考えているそうです。

 

「この地域から市民図書館までは歩くと20〜30分ほどかかるので、ご年配の方や子どもには少し遠いかもしれません。実際、孫がくるときにはここの本を借りていくという声もあります。それがモチベーションにもつながっています」

自宅の中にも本がいっぱい。

オープンから数年は、イベントを開くたびに集客について悩んだりしたそうですが

 

「礒井さんが一人一人ときちんと会話できるのは、3〜4人くらいが限度なんだと話されていて、とても楽になったんです。やりたいイベントを、やりたい人でやればいんだと。人が来なくても、やったことに満足するという感じ。今では力まないどころか、『本を置いています』というだけです。笑」

 

ゆるやかに広がる「ホンノワ」ネットワーク

友人たちと始めたという「ホンノワ」の活動。いまでは市外の人ともつながり、10人ほどのオーナーさん同士でゆるく情報交換や本の交換会などを行なっているそうです。

最近、面白いことが起こっているという高島さん。

 

「『かいけつゾロリ』シリーズの本が何冊かあるでしょう?私は置いた覚えがないんですよ。他の本箱で借りたものを、ここに返しにきてるみたい。逆もあるみたいで面白いですよ」

 

寄贈本をメインにすることで、本が移動しても、数ヶ月帰ってこなかったりしても「誰かが気に入って大事にしてくれてるならいいや」と思えるそうです。

 

「『厳選図書』みたいにしたこともあったのですが、なくなっちゃったら悲しくなる。大切な本は家の中に置いてたらいいんやなって。そこにも力を入れないようにしています」

 

本は、ただの「もの」ではなくて、読んだときの心や思い出が詰まっています。手放したくないものはとっておく。そんな「がんばらない」もあるんですね。

 

「近所のお友だちも本の巣箱を置いているので、案内しますね」

 

こちらの本箱も高島さんのお父様が作られたもの。

 

静かな住宅街の中で、ゆるやかに、でもしっかりと「本の輪」が広がっているのを実感しました。

 

まちライブラリーは、それ自体をメインの活動にせず、ひとつのコミュニケーションツールとして活用していきたいという高島さん。

 

「たとえば仕事など、普段からいろいろと考えなきゃならないことが多い中で、それとは切り離した活動、場所を持てることがうれしい。利用される人にとっても、ふらっと立ち寄れる場所であったらいいなと思います。」

 

ページトップへ