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まちライブラリー@イーラボ 探訪記

訪問&報告者:吉川 圭太

訪問日:2023年7月20日

まちライブラリー@イーラボ

豊かな自然と地域コミュニティが織りなすまちライブラリー@イーラボの物語

富山県小矢部市にあるまちライブラリー@イーラボにお邪魔させていただきました。

小矢部市は富山県の西部、石川県との県境にあります。ほのぼのとした地方都市で、美しい山々、清流、そして豊かな農産物で知られています。春には新緑、秋には紅葉と四季折々の風景を楽しむことができます。

まちライブラリー@イーラボは小矢部市の中心部のヤマシナ印刷の2階にあり、すぐ近くには小矢部市のランドマークであるクロスランドタワーがあります。

ヤマシナ印刷は、本業は印刷所ですが、さまざまな事業やプロジェクトをおこなっておられます。お客様のど真ん中を追求する「ど真ん中名刺」の制作や、養蜂してハチミツを作り、それを通貨がわりにする「はちみつうか」プロジェクトなど、印刷所の枠を超えた活動をしています。

その一つとして、コミュニティスペース「ELABO(イーラボ)」があります。そして、その中でまちライブラリー@イーラボも活動をしています。

ELABOは、ヤマシナ印刷の2階のスペースを利用した、コワーキングや勉強、イベントなどに利用できる、コミュニケーションスペースです。

その一角にまちライブラリーの本棚があり、ELABOの利用者を中心に本を借りていかれるそうです。

ライブラリー@イーラボ本棚紹介

<コワーキングスペース>

本棚はいくつかの場所に分かれて置かれています。メインとなる本棚はジャンルごとではなく、背表紙の色ごとに分けられていて視覚的にも楽しませてくれます。

オーナーの山科さんは、ご自身の内面やあり方について深く向き合う方で、蔵書にもそのような傾向を感じました。答えのない生き方を求め、社会の様相を手繰り寄せるような本が多いと思います。

自己啓発・社会学的な探求に興味のある方は、きっと良い本に出合えるのではないでしょうか。

<2階廊下>

廊下の片隅にも本棚がありました。イーラボでは子供向け英会話教室なども開催されていて、小学生やお迎えに来られる保護者の方や読んでいかれるそうです。こちらの本棚は、手に取りやすい小学生向けの伝記や漫画なども並んでいます。いろんな本棚を見て回るのも楽しいところです。

駄菓子屋さんと漫画本

一階のヤマシナ印刷の入り口には『ヤマシナの駄菓子屋』があり、そこにもまちライブラリーの本棚がありました。ここは漫画が並んでいて、駄菓子を買いにきた小学生などが読んでいくそうです。入口に近いほど手に取りやすく、奥に進むほどじっくりと考えを深める本が置かれているのは、工夫を感じました。

 

まちライブラリー@イーラボのオーナーの山科森さんにインタビュー!

——— まちライブラリーを始めたきっかけは?

近くでまちライブラリーやられていた「ごしょカフェ」さんが、まちライブラリーという活動をやってるよっていう話を聞いたのがきっかけでした。別にお金もかからないし、登録さえすればいいだけだよって聞いて、じゃあやってみようかってなりました。
それがどれくらい前だろう、2・3年前 ぐらいですかね。

そもそも、自由に貸し出している本棚があって、まちライブラリーに登録する前から同じような活動をしていました。
もともと、ここでコワーキングスペースをやっていて、利用者が本を持ち込んで1000冊以上あって、自由に貸し借りできる状態だったので、何か新しいことを始めましたというよりは、もうすでにやってる活動があるからまちライブラリーに登録してもいいよねって感じでした。

 

——— 本棚が一階と二階にありますが、それぞれ特徴は?

二階はコワーキングスペースになっているので、その利用者が読みたい本を持っていく感じです。

最初は、こういう活動やっているので「みなさんのご自宅で余ってる本あったら、持ってきてもらえると助かります」って感じで声をかけて、持ってきてもらってました。
結構たくさん集まって嬉しかったんですけど、いろんな本が集まってきて自分が興味ない本とかもありました。本棚って自己紹介的な部分があるので、本棚の風景的に合わないものとかあり、もらったはいいけど結局処分しちゃうのもありました。
なので、今は自分で読みたい本を本棚に置いていくって感じになりました。

一階の本棚は駄菓子屋さんと併設してあって漫画ばっかり置いてますね。こっちはもらった本か、はちみつうかと交換したもの(山科印刷では養蜂をやっていて、ハチミツと色々なものを物々交換をしている)。
利用するのが小学生の子どもたちで、たまに中学生もくるかなって感じなので、最初は文庫本とかも置いてたんですけど、誰も読まないんで置いててもしょうがないからマンガばかりになりました。

 

 

——— Facebookで読んだ本を紹介して貸し出しもやってますよね?

ふとあるとき「読みたい本ありますか」って本を並べて画像を投稿したら、思ったよりも反応があって、だいたいみんな飛んでいくんですよね。
それから僕の余裕のあるときに、本を並べた画像アップして読みたいひとに本を飛ばすようになりました。
そうしたら、飛ばした相手が本を返してもいいんですけど「もう一回、別の人に飛ばしてもいいですか?」っていう質問がきたりして、全然良いですよってことで本が旅に出てるって感じです。

返却してもらうかどうかは、あえて曖昧にしています。
返却してもらうか、あげるかも何も言わないで送っています。それでどうなるかわからないけど、相手にまかせています。
返ってくることもあれば、その人の本棚に入ることもあるし、交換で別の本が返ってくることもあります。

中にはアップした画像の中から選ぶんじゃなくて、てきとうに選んだ本を送ってくださいという依頼もありました。じゃあってことで選んで送りました。

以前に、うちで名刺を作るお客さんに愛読書を聞いて、それを読むっていうのをやっていたんですよ。その方の名刺を作るのに、その方がどんなことに興味があるのかなっていうのを一歩踏み込んで理解するために、その方が薦めた本を読むってやっていたのが結構よくって、自分の境界を広げることになる。
なので、他の人に勧められた本読むってのもいいと思う。

 

本が繋げる地域にコミュニティ

「まちライブラリー@イーラボ」は、単に本を貸し出すだけの場所ではなく、地域コミュニティのコミュニケーションスペースとしての役割を果たしています。山科さんの自由な発想と活動を通じて、本という媒体を利用して地域の人々とのつながりを深め、情報や知識の共有しています。

本の貸し出しにとどまらず、SNSを利用した本のシェアリングや、他の人に勧められた本を読むといった試みもありました。
山科さんの言葉を借りれば、まちライブラリー@イーラボは「本が旅をする」場所。本を通じて人と人がつながり、地域の絆を深める場所となっています。

その活動は、まちライブラリーが地域コミュニティにどのように貢献できるか、新しい形の公共空間とは何か、ということを私たちに示しています。

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